この住まいは、猫と人がともに心地よく暮らすために設計された、延床30坪・3LDKの住宅です。
キャットウォークや吹き抜けを活かした立体的な動線によって、家の中に「猫的まちなみ」が広がっています。
設計には、ケヴィン・リンチが提唱した「都市の5つのエレメント」(Path〈道〉、Edge〈縁〉、District〈地区〉、Node〈結節点〉、Landmark〈目印〉)の考え方を応用。
猫にとって、移動経路と居場所が明瞭に認識できるようなイメージアビリティの高い空間を立体的に構成しました。
小屋裏は、登り梁と方杖を用いることで、猫たちの歩みを妨げない無柱空間とし、そこに「メインキャットウォーク」と名付けた猫の大通りを設けました。
このメインキャットウォークから分岐するキャットウォークへと動線がつながり、猫たちのPathを形づくっています。
寝室に設けた階段状本棚やキャットツリー、猫柱は、上下階を結ぶNodeとなり、さらに、都市のイメージ理論に沿って、優れたNodeは猫たちにとって心地よいDistrictとなっています。
なかでも、リビングに開かれた階段の踊り場は、人の目線の高さにあり、立ったまま猫たちと自然にふれあえる場所です。
家の各所で人の動線と猫専用の動線を重ね合わせることで、空間には豊かな奥行きと猫との交流が生まれています。
猫たちはPathを歩み、Nodeを巡り、Districtで好きなように振る舞いながら、家全体を旅していきます。
けれど、その旅の終わりには、必ず飼い主さんがいる場所へと帰ってきます。
人にとっても、視線が遠くまで伸びる開放的な空間と、天然木のぬくもりが、猫たちとの静かな日々をやさしく編み上げていきます。
撮影:株式会社アトリエあふろ(糠澤武敏)※猫写真以外