猫は昔から私たちの良きパートナーとして暮らしてきました。
特に田舎では家と外を自由に行き来させる家庭も多かったのですが、最近では猫を外に出さない完全室内飼育へと飼い主さんの意識が変わりつつあります。
環境省でも猫は室内で飼育することが推奨されているのです。
「室内だけで飼育するのはかわいそうだ」
そのような意見も耳にします。
しかし、猫のための内部空間である「猫的町並み」をつくることで、限られた室内だけでも幸せに暮らしていけるのです。
また、猫を完全室内飼育することは、猫の安全ためでもありますし、外にいるいろんな野生動物に対して、猫による狩りの被害を減らす目的から生物多様性保全への対応だともいえます。
この記事では、
について解説します。
完全室内飼育することで得られるメリットは、猫と飼い主どちらにもあります。
NPO法人「人と動物の共生センター」の調べによると2019年の猫の路上死は推計で289,572頭でした。よく話題になる行政による殺処分が同年で27,108頭ですから10.68倍です。いかにロードキルが多く、猫にとって外が危険かわかる数字です。
完全室内飼育をすることで、こういった交通事故を防げます。
放し飼いでは、他の猫と喧嘩をし、怪我をしてしまうこともあるでしょう。
その際に傷口からウイルスに感染し、愛猫の生命をおびやかす危険性もゼロではありません。
また、ウイルスを持っている猫の唾液や鼻水、排泄物より感染してしまうこともあるのです。
完全室内飼育だと、外部の猫と接触する機会がないので感染症の危険から守れるというわけです。
猫は自由な生き物。
出かけている先も飼い主ですらわからないですよね。
ふらっと出ていき、迷子になってしまったため、そのまま家に帰ってこないこともあります。
どんなに賢いと思っていても、確実に家に帰ってくる保証はどこにもありません。
迷子のリスクを減らすためにも、室内のみで飼育するべきなのです。
放し飼いだと、よその家の敷地内で排泄をしてしまうこともあります。
近隣の方が猫好きとは限りません。猫アレルギーの方もいらっしゃいます。
猫好きには愛らしく思える行為でも、場合によってはトラブルに発展してしまうことも。
近隣住民への迷惑を防ぐ目的としても、放し飼いにするべきではないです。
避妊手術や去勢手術をしていない猫が外に出ると、妊娠する・させてしまう可能性があります。
本当に猫が好きなのであれば、望まない妊娠は防ぐべきです。
生まれた子猫たちはどうしますか?
責任を持って最後までお世話できますか?
避妊、去勢手術が受けられない事情があったとしても、完全室内飼育なら他所の猫と接触することはないので望まない妊娠は防げます。
ここまで猫にとって完全室内飼育が好ましい理由をお伝えしてきました。
閉じ込めてしまうようでかわいそうと思ってしまうかもしれませんが、外には危険がたくさんあります。
また、ご近所に迷惑をかけトラブルに発展するケースも少なくありません。
迷子になってしまったり、怪我や感染症のリスクもあるのです。
「猫のため」と考えると、やはり完全室内飼育がベストだといえます。
もちろん、猫が幸せに暮らしていける環境を整える必要が飼い主にはあります。
猫を完全室内飼育するうえで注意しなければならない点がいくつかあります。
猫が誤飲・誤食してしまうものは置かないようにしましょう。
観葉植物は猫にとって毒であるものも多いです。
また、アロマオイルも成分が含まれているため同様に危険です。
つい猫が遊んでしまいがちな糸やリボンなど紐状のもの、また単なる布でも、ウールサッキングといって食べてしまうことがあります。おもちゃもそうですが、猫が触れられない場所にしまっておく必要があります。
外に出たがる猫は執拗に窓を開けようとします。また一般の屋内ドアなら簡単に開けてしまいます。
戸締りはきちんと行いましょう。換気をしていても猫が外に出ない工夫も必要です。
適度な日光浴も猫の健康のためには欠かせません。
ガラス越しでもよいので、猫がいる部屋には日光が差し込む配慮をしましょう。
家の中は外よりも刺激が不足しがちです。
また、自由に遊べる環境がなければ、運動不足による肥満につながることもあります。
猫を完全室内飼育するうえでの課題の1つだといえるでしょう。
刺激不足や運動不足を解消するために「猫的町並み」を家の中に実現することをお勧めしています。
猫が楽しめるような工夫を家の中に凝らすことは、飼い主にとっても共通の望みです。
猫が猫らしく幸せに暮らせる「猫的町並み」とはどのようなものでしょうか。
猫的町並みは、簡潔にお伝えすると猫のフィジカルとメンタルの両方に対して好ましい内部空間です。
米国の都市計画家ケヴィン・リンチの著書『都市のイメージ』では、都市を構成するエレメント(要素)を以下の5つに整理しています。
①Path(パス)→道路
②Edge(エッジ)→縁(ふち)
③District(ディストリクト)→地域
④Node(ノード)→接合点・集中点
⑤Landmark(ランドマーク)→目印
この5つのエレメントを猫の家を計画する強力なツールとして活用し、ストレスフリーとなるような「わかりやすさ・見えやすさ」を兼ね備えた猫にとっての家を実現していきます。
よき飼い主が猫にプレゼントする家は、フィジカルとメンタルの両方が健康になるものであって欲しいと思います。
そのためにも、猫的町並みを自宅に取り入れていただきたいのです。
次の記事では、猫的町並みを構成するために必要な5つのエレメントについてわかりやすく解説していきます。
「住居の中に猫的町並みを展開する」シリーズ1/5(2022.08.19)
こちらも読まれています。